YURI PARK

2021/09/22 00:24

(前編のつづき)

現在ハンブルグ美術館に所蔵されているその絵画は、「キリストの無縫製外衣を編むマリア」(“Visit of the angel” Master Bertram of Minden (1345~1415) )と題された教会祭壇画です。この絵の中でマリアは、少年イエスのために手編みでセーターを編んでいるのですが、手にしているのは4本の編み針。通常の手編みは2本の編み針を用いて編み、4本の針を使うのは縫い目のない筒状のものを編むときの手法です。聖書には、キリストの縫い目のない衣についての記述がありますが、当時のそれは織り物(おりもの)であったと思われます。この絵画で編み物(ニット)として描かれていることは不思議なことでした。そしてこの絵画が持つ意味を探るうちに、それまでずっと心の奥底にしまっていたホールガーメントへの思いが再び湧き上がり、私たちが手横編機で作っている立体的フォルムのアルティジャーノニットを、カポ・コンプレート(完成された一体の)ニットとして実現するというアイディアが生まれました。この一枚の絵画との出会いがきっかけとなり、私たちの縫い目のないニットへの新しいチャレンジが始まったのです。」YURI PARK